ヘビの筋骨格系を再現する生体システムモデル
Biological system models reproducing snakes' musculoskeletal system
ヘビはヒモ状の単純な身体構造を持ちながら,その胴体を環境に応じて自在に屈曲させることできわめて高い環境適応運動機能を有する動物です.その独特の身体構造が有する機能的意味とその身体に特有の適応的制御メカニズムを明らかにするため,生体のヘビの身体構造をできるだけ忠実に再現するヘビの生体システムモデルを構築しています.解剖やCT撮像による身体構造の定量的計測やモーションキャプチャによる運動計測などを通じて得られたヘビに関する生物学的知見を統合し,仮想ヘビシミュレータおよび超多関節筋を有する空気圧駆動型ヘビ型ロボットを構築しました.これらのモデルに基づき,ヘビが見せる巧みな環境適応運動のメカニズムに迫る研究を続けています.
CT撮像によるヘビ骨格の解析
仮想ヘビシミュレータ
超多関節人工筋をもつヘビ型ロボット PAS-2
PAS-2による蛇行運動 (動画)
- Kousuke INOUE, Kaita NAKAMURA, Masatoshi SUZUKI, Yoshikazu MORI, Yasuhiro Fukuoka, Naoji SHIROMA: Biological System Models Reproducing Snakes' Musculoskeletal System, Proc. IEEE/RSJ International Conference on Intelligent Robots and Systems (IROS2010), pp.2383-2388 (2010/10)
ヘビ型ロボットのCPGによる制御
CPG-based control of a snake-like robot
遊泳,歩行,蛇行,羽ばたきなど,動物の移動運動 (ロコモーション) の多くはリズム的であり,その運動リズムは全身的に調和したパターンをなしています.この調和したリズムは大脳皮質などの上位中枢で創りだされているのではなく,CPG (中枢パターン発生器 central pattern generator) と呼ばれる,脊髄や神経節などの下位の神経中枢で自律分散的に生成・制御されていることが明らかになってきました.この研究では,ヘビ型ロボットの蛇行運動 (lateral undulation locomotion) を制御するCPGモデルをEkebergらがヤツメウナギを対象に提案したモデルをベースとして構築し,ヘビが地面から受ける摩擦力をCPGにフィードバックすることにより,横滑りの少ない路面では小さなくねり,滑りやすい路面では大きなくねりで進むという,生体のヘビと同様の適応蛇行運動を生成する神経制御系を提案しました.
用いたヘビ型ロボット
CPGモデル (Ekeberg)
力センサ
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シミュレーション (動画) | | ロボットによる実験 (動画) |
- Kousuke INOUE, Shugen MA, Chenghua JIN: Neural Oscillator Network-Based Controller for Meandering Locomotion of Snake-Like Robots, Proceedings of 2004 IEEE International Conference on Robotics and Automation (ICRA2004), pp.5064-5069 (2004/04)
- Kousuke INOUE, Shugen MA, Chenghua JIN: Optimization of CPG-Network for Decentralized Control of a Snake-Like Robot, Proceedings of 2005 IEEE International Conference on Robotics and Biomimetics (ROBIO2005), pp.730-735 (2005/07)
- Kousuke INOUE, Takaaki SUMI, Shugen MA: CPG-based Control of a Simulated Snake-like Robot Adaptable to Changing Ground Friction, Proc. IEEE/RSJ International Conference on Intelligent Robots and Systems (IROS2007), pp.1957-1962 (2007/10)
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協調的移動ロボット群による繰り返し搬送作業
Iterative Transportation by Cooperative Mobile Robots
単一の有能なロボットを用いるよりも, 複数の低機能なロボットを多数利用することで, 条件の変化に対応しやすい柔軟なロボットシステムを構築することが可能であるという動機から, 複数のロボットを協調的に利用するための方法論が従来盛んに研究されてきました.この研究では, 複数の移動ロボットを利用する上で考え得る作業のうち, 重要な一つのカテゴリとして「多数物体の繰り返し搬送作業」を扱い, これを未知の環境において作業条件の変動に適切に適応しながら実現する動作計画手法を提案しています.作業環境上におかれた未知の障害物を回避するため, ロボット群は最初環境を協調的に探索しながら搬送を行い, 効率的な作業実現が可能な程度の探索が終了した時点で, 繰り返し搬送に適した経路ネットワークを構築します.この経路の上で, 作業物体を取り扱う際のコストに応じて, 最も効率の高い作業フォーメーションを強化学習により獲得することで, ロボット同士が邪魔をしあわないような協調的作業形態のもとに繰り返し搬送作業を実現します.
繰り返し搬送作業
- Kousuke INOUE, Jun OTA, Tomokazu HIRANO, Daisuke KURABAYASHI, Tamio ARAI: Iterative Transportation by Cooperative Mobile Robots in Unknown Environment, Distributed Autonomous Robotic Systems 3 (Proceedings of The 4th International Symposium on Distributed Autonomous Robotic Systems (DARS1998)), Eds. Leuth,T., Dillmann,R., Dario,P., Worn,H., Springer, pp.3-12, (1998/05)
- Kousuke INOUE, Jun OTA, Tamio ARAI: Iterative Transportation by Multiple Mobile Robots Considering Unknown Obstacles, Journal of Robotics and Mechatronics, 21-1, pp.44-56 (2009/02)
部分観測環境下における人工エージェントの行動獲得
Behavior Acquisition by an Artificial Agent in Partially Observable Environment
移動ロボットなどの実世界と相互作用する人工エージェントは自らのセンサを通じて環境の情報を獲得しますが, このようなエージェントの感覚システム(センサ)は一般的に, ある距離以上離れた対象を感じることができない(sensing-range), 物陰のものは感じられない(occlusion)という局所性の問題, ノイズを含んでいる(sensing-error)などの不確実性の問題を含んでいます.また, もう一つの問題として, 特定の観測値に対して, それが持つ意味をエージェントがどのように解釈するかは, エージェントが環境とどのように影響を及ぼしあうかに応じて適した解釈方法が変動するため, これをあらかじめ適切に与えておくことが困難です.この研究では, このような人工エージェントが自らの状況を認識する上での難しさの原因となっているこれら2つの問題を解決し, 極めて低レベルのセンサを持つエージェントが, どのように状況を認識すればよいかのメカニズムを実際に得られた経験に基づいて獲得し, これによって適切な行動を獲得する方法を提案しています.
- Kousuke INOUE, Shugen MA, Jun OTA: Acquisition of Global Information from Local Observation with Movement - Construction of Internal State-Representation under Partial Observabability -, Proceedings of IEEE International Conference on Robotics, Intelligent Systems and Signal Processing (RISSP2003), pp.370-375, (2003/10)
- 井上 康介, 太田 順, 新井 民夫: 部分観測環境における複数タスクに対する行動獲得, 計測自動制御学会論文集, 38-7, pp.641-648 (2002/07)
人工エージェントの個体発生論的発達に向けた汎化知識の獲得
Acquisition of Generalized Knowledge for Ontogenetic Development of a Robot
人工エージェントが環境やタスクに応じた適した行動の仕方を学習・適応手法により獲得する方法が現在盛んに研究されています.ところが, これらの研究で提案されている方法は主に, (1) 特定の環境・タスクが与えられたとき, それに応じて適した行動を獲得する(短期的適応), (2) 進化的計算などの方法を用いて, エージェント群が世代を重ねる中で適応を行う(系統発生論的時間スケールでの適応)に分けられます.これに対して, この研究ではエージェントが様々な環境・タスクに対する行動の学習を繰り返すにつれて「成長」していくという, 個体発生論的時間スケールでの適応を目指しています.つまり, 様々な条件での学習を繰り返す過程で, ある範囲の問題に共通して有効な知識を見つけ出し, 次にその種類の問題を扱うときはその知識を使うことで, より速い学習が可能になる, という方法です.このような方法で, エージェントが一般的な(汎化された)知識を蓄積することで, エージェントの「生涯」という時間スケールでの適応を考えているのがこの研究です.
- Kousuke INOUE, Jun OTA, Tomohiko KATAYAMA, Tamio ARAI: Acceleration of Reinforcement Learning by a Mobile Robot using Generalized Rules, Proceedings of 2000 IEEE/RSJ International Conference on Intelligent Robots and Systems (IROS2000), pp.885-890, (2000/04)
- Kousuke INOUE, Jun OTA, Tamio ARAI: Acceleration of Reinforcement Learning by a Mobile Robot Using Generalized Inhibition Rules, Journal of Robotics and Mechatronics, 22-1, pp.122-133, (2010/02)
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